最大で年間360万円を運用できる「新NISA」。
これまでのNISAの投資枠は使い切りでしたが、新NISAでは商品を売ると投資枠を再利用できるルールが加わりました。
「成長投資枠」では値動きが大きい個別株などに投資できるため、トレンドに沿ったポートフォリオを組む目的で、投資枠を再利用するケースが増えると考えられます。
しかし投資枠は売った直後に復活しないので、再利用のルールについて難しいと考える方も多いでしょう。
そこでこの記事では、新NISAの再利用に関するルールについて解説します。再利用を活用すべきタイミングについても紹介しています。
この記事を読めば必要なタイミングで「再利用」できるようになるので、成長投資枠で迷わず商品を買えるようになりますよ。
新NISAの投資上限額
新NISAの投資枠について、概要を下表にまとめました。
項目 | つみたて投資枠 | 成長投資枠 |
---|---|---|
投資上限額(年間) | 120万円 | 240万円 |
投資上限額(生涯) | 1,800万円 (成長投資枠は1,200万円まで) | |
非課税保有期間 | 無期限 | |
対象商品 | 金融庁の基準を満たした一定の投資信託 | 上場株式、投資信託、ETFなど |
再投資ルール | 新NISAで買った商品を売れば、来年以降で投資枠を再利用できる |
年間360万円|成長投資枠は240万円
新NISAの年間投資上限額は360万円で、内訳は以下のとおりです。
- つみたて投資枠:120万円
- 成長投資枠:240万円
つみたて投資枠では、金融庁が「安全性」と「成長性」のバランスを考慮して選んだ投資信託のみ購入でき、長期的に利益を狙えます。
一方、成長投資枠では投資信託だけでなく、国内外の個別株やETF(上場投資信託)にも投資が可能です。
たとえば成長投資枠で買える有名な個別株として、以下が挙げられます。
- ミズノ
- ニッスイ
- 日本トリム
- GMOメディア
- ゼリア新薬工業
※2024年7月22日時点
成長投資枠では個別株でハイリターンを狙えるので、安定的に資産を運用できるつみたて投資枠と併用すると資産を増やしやすいでしょう。
生涯1,800万円|成長投資枠は1,200万円
新NISAは一生涯で合計1,800万円までの資産を、非課税で運用できる制度です。
つみたて投資枠では1,800万円を使い切れますが、成長投資枠には「最大1,200万円」の上限があります。
毎年240万円(月20万円)を満額投資すれば、最短5年で成長投資枠を使い切れます。
新NISAの成長投資枠を再利用する3つのルール
新NISAの成長投資枠を再利用するルールは、主に以下の3つです。
- 復活のタイミングは来年
- 再利用後の投資上限額は360万円
- 再利用枠に反映されるのは買付価格
再利用のルールを知っておけば、自分がどのタイミングで使えるか理解できます。
枠復活のタイミングは来年
新NISAで保有している商品を売った場合、投資枠が復活するタイミングは来年以降です。
たとえば2028年7月に360万円の投資枠を使い切ったあと、同年8月に100万円分を売っても、2028年は商品の買い足しができません。
投資枠が復活するのは、翌年(2029年)の1月1日以降です。
売ってもすぐに復活しないので、投資枠が復活するタイミングを考慮して商品を売りましょう。
再利用後の投資上限額は360万円
新NISAで保有している商品を売っても、翌年の投資枠は最大360万円から変わりません。
理解しやすいように、以下の状況をイメージしてみましょう。
- 2024年7月に「360万円」の投資枠を使いきり、同年の8月に100万円分を売る
- 100万円分を来年以降に再利用できるが、2025年の投資上限額は360万円のまま
(360万円+100万円=460万円ではない) - 100万円分を再利用できるのは、最短で5年後の2029年から
5年後の2029年までに「1,800万円」の生涯投資枠を使い切れないときは、年末時点での生涯投資枠の残りが360万円を下回るまで再利用できません。
下表では、5年間で360万円の投資枠を使い続けたケースで、年間の投資枠をまとめています。
年 | 年間投資枠 | 売却 | 累計投資額 | 年末時点での投資枠の残り |
---|---|---|---|---|
2024 | 360万円 | 100万円 | 360万円 | 1,540万円 |
2025 | 360万円 | – | 720万円 | 1,180万円 |
2026 | 360万円 | – | 1,080万円 | 820万円 |
2027 | 360万円 | – | 1,440万円 | 460万円 |
2028 | 360万円 | – | 1,800万円 | 100万円 |
2029 | 100万円 (再利用の反映) | – | 1,900万円 | – |
投資枠を再利用できるタイミングは、もう少し先の話です。
本記事で解説している最低限のルールを理解していれば、新NISAでの資産運用には困らないでしょう。
再利用枠に反映されるのは買付価格
新NISAで保有する商品を売ったとき、再利用枠に反映されるのは売った商品の「買付価格」です。
たとえば「1株=1万円」で取引すると、再利用できる金額は以下のようになります。
- 「100株=100万円」で購入(買付価格)
- 株が値上がりして「100株=120万円」で売却(売却価格)
- 再利用枠に反映されるのは、買ったときの100万円
株が値上がりして高値で売れたとしても、再利用枠には買付価格の100万円が適用されます。
反映される金額を理解しておけば、正確に再投資の計画を立てられるでしょう。
新NISAの成長投資枠を再利用する3つの注意点
新NISAの成長投資枠を再利用するときは、最低でも以下の3つに注意しましょう。
- 長期運用なら再利用の必要性は低い
- 旧NISAを売却しても再利用できない
- 変更前の口座で売却した枠は新しい口座でしか適用できない
注意点を知っておけば、自分が再利用すべきか判断できるようになります。
長期運用なら再利用の必要性は低い
NISAで長期的に資産を運用する場合、投資枠の再利用は必要性が低いです。
長期投資で用いられる「ドルコスト平均法」は、一定額を買い続けて平均的な購入単価を安定させる方法だからです。
再利用のために商品を売ると購入単価のバランスが崩れ、長期投資のメリットが薄れてしまいます。
「オール・カントリー」や「S&P500」などの有名な投資信託に投資すれば、長期的に利益が狙いやすいです。
長期運用を目指す方にとって、投資枠の再利用は必要ないかもしれません。
旧NISAを売却しても再利用できない
2023年までの旧NISAで保有している商品を売っても、新NISAの投資枠は増えません。
投資枠の再利用は、2024年の新NISAから導入されたルールだからです。
2023年までのNISAで運用している商品は、売らずに運用し続けるのが無難でしょう。
変更前の口座で売却した枠は新しい口座でしか適用できない
変更前の金融機関のNISA口座で商品を売却すると、新しい金融機関のNISA口座で再利用が適用されます。
つまり変更前のNISA口座では、新たに商品を買えません。
NISA口座は1年ごとに変更できるので、変更前のNISA口座で再利用したいときは来年から金融機関を変えましょう。
新NISAで成長投資枠の再利用をフル活用する2つのタイミング
新NISAの成長投資枠は、以下のようなタイミングで再利用するのがおすすめです。
- 急な出費で切り崩したとき
- 株式で含み益が大きいとき
再利用のベストタイミングを知り、NISAの投資枠を効率よく活用し続けましょう。
急な出費で切り崩したとき
急な出費が必要になったときは、落ち着いたタイミングでNISAを再利用すると良いでしょう。
たとえば子どもの教育資金や住宅購入資金など、まとまった資金が必要になったときはNISAで運用している資産を売って、現金に換えるかもしれません。
出費が必要なタイミングを過ぎれば、売却した枠で再び投資できるので、非課税での運用を再開できます。
NISAの再利用は柔軟に対応できる仕組みなので、ライフステージに合わせて効率的に資産を運用し続けられます。
株式で含み益が大きいとき
投資枠の再利用は、NISAの含み益が大きいときに有効活用できます。
商品を売って発生した「非課税の利益」は、NISAの再投資にまわせる※からです。
※2024年7月時点で金融庁に確認済
以下に、具体例として「100株=100万円」で購入したパターンを紹介します。
- 100万円分の株を買う
- 株が120万円に値上がりする
- 株を売って20万円の利益を確定させる
- 利益の20万円で再投資をする
発生した利益でも翌年以降に再投資ができるので、NISAで含み益が大きくなっているときは再利用を活用すると良いかもしれません。
しかし頻繁に売買をすると、以下のようなデメリットがあります。
・長期投資のメリットが減る
・取引のたびに手数料がかかる
含み益が発生しているときは、上記のデメリットを踏まえたうえで再利用を検討してみてください。
新NISAの再利用に関するよくある質問
新NISAの再利用ルールに関するよくある質問に回答します。
- つみたて投資枠も再利用できる?
- 新NISAでは繰り返し売買できる?
- 今年売却したら来年は投資枠が増える?
それぞれ見ていきましょう。
つみたて投資枠も再利用できる?
つみたて投資枠でも、成長投資枠と同じように再利用ができます。
しかし、つみたて投資枠は長期的な資産形成を目的としているので、頻繁に商品を売ってしまうと損失リスクを分散しにくくなります。
「つみたて投資枠」でコツコツ資産を増やしつつ、「成長投資枠」を再利用しながらポートフォリオを調整するのが良いでしょう。
新NISAでは繰り返し売買できる?
新NISAの成長投資枠では、繰り返しの売買ができます。
しかし商品を売っても、投資枠が復活するのは来年以降です。
年内に買える金額は「360万円まで」なので、売り買いには上限があることを理解しておきましょう。
今年売却したら来年は投資枠が増える?
新NISAで保有している商品を売っても、来年の投資枠は360万円が限度です。
たとえば100万円分の商品を売っても、来年の投資枠が460万円に増えることはありません。
詳しく知りたいときは、こちらの章をご覧ください。
まとめ
この記事では、新NISAで成長投資枠を再利用する仕組みについて解説しました。
成長投資枠ではトレンドによって値動きしやすい「個別株」に投資できるので、投資枠の再利用を活用すれば最適なポートフォリオを維持できます。
しかし投資枠の再利用は、長期投資による安定的な資産運用には向かないうえに、適用されるのは最短でも2029年からです。
現状は信頼できる投資先に長期的な視点で投資し、NISAの非課税メリットを活用して効率よく資産を増やしていきましょう。